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PRESS RELEASEプレス情報

2019年10月30日 読売新聞

きらり*企業テク
福徳技研(広島市) 鉄筋コンクリートの補修技術
構造物管理 防さびで向上

2019年10月30日 読売新聞 | 福徳技研株式会社
 橋などの鉄筋コンクリート構造物は、長年潮風にさらされたり、二酸化炭素に触れてコンクリートが中性化したりするうちに内部の鉄筋がさび付き、ひび割れなどの劣化が発生する。この鉄筋のさびを防ぎ、構造物の寿命を延ばすための新たな補修技術で評価を得ているのが、広島市中区の「福徳技研」だ。
 創業以来、塗装を主力としてきたが、バブル崩壊の影響で1990年代前半に業績が大幅に悪化。「塗装業は価格競争になりやすく、同業者もかなり倒産した。別の事業を始めなければ生き残れないという危機感があった」と徳納剛社長(64)は振り返る。
 そこで目をつけたのが、コンクリートの補修工事だった。当時は、コンクリートのひびを埋めるなどの劣化対策が主流で、鉄筋に付いたさびの処理を重視せず、再劣化を繰り返していた。
 講習会や専門誌を参考に工事のノウハウを得る中でたどり着いたのが、鉄筋のさび防止に効果的な「亜硝酸リチウム水溶液」だった。コンクリートの表面に小さな穴を開け、この水溶液を圧力で内部に注入する「リハビリ工法」を確立した。効果の高さや採算性が評価され、昨年度の「中国地域ニュービジネス大賞」に選ばれた。
 リハビリ工法は複数あり、コンクリートの劣化状況などに応じて決める。同社は自社の技術を生かし、橋だけでなく、国有形文化財に登録されている愛媛県鬼北町の町長舎改修など、建造物の修復にも携わってきた。
 また、専門技術を持った人材の育成にも力を注ぐ。徳納社長が会長を務める一般社団法人「コンクリートメンテナンス協会」では、有識者を招いたフォーラムを開くなどし、コンクリートの維持管理や安全性の診断方法について、正しい知識の普及に努めている。
 徳納社長は「鉄筋コンクリート構造物の新築は飽和状態で、これからは補修工事がますます必要になる。建造物を安全に保つための技術開発を今後も続けたい」と意気込む。(広島総局 佐藤一輝)