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2017年04月20日 中建日報

日本最古のRC住宅など調査|JCMAと県コンクリ診断士会|徳納会長「補修担う人の経験に」

2017年04月20日 中建日報|日本最古のRC住宅など調査|JCMAと県コンクリ診断士会|徳納会長「補修担う人の経験に」 (一社)コンクリートメンテナンス協会(徳納剛会長)と広島県コンクリート診断士会(米倉亜州夫会長)は14日、長崎市の端島(軍艦島)で会員約40人が参加する現地研修会を開き、閉山当時のまま残るコンクリート構造物の劣化状況や、同会らが数年前から実施しているコンクリート試験体の曝露試験の経過状況などを調査した。
 長崎港の南西約19kmの海上に浮かぶ端島は、江戸時代後期に石炭が発見されたのち、明治23年から本格的な炭坑の島として開発。最盛期には幅160m、長さ480mの小さな島に5200人が居住する人口密度世界一の島として栄え、高層アパートや学校・病院など多くのコンクリート建築物が建設された。
 その後、国のエネルギー転換政策を受けて昭和49年に閉山され、全住民が退去。平成27年には「明治日本の産業革命遺産」の一部として世界文化遺産に登録される一方、島内の建築物は強い塩害環境の中で当時のまま放置されていることから、コンクリート技術者にとっては貴重な研究の場にもなっている。
 研修会では、長崎市世界遺産推進室の担当者らが注意事項を説明したのち、ヘルメットと安全靴に身を包んだ参加者らが2班に分かれて島内を一周。至るところで塩害等による鉄筋の腐食や破断、コンクリートの剥落、崩壊等が発生し、建物全体がいつ崩れてもおかしくない状況であるため慎重に歩を進め、日本最古のRC造集合住宅と言われる30号棟や海水による洗掘で基礎杭が剥き出しになり、さらに杭の一部が無くなっている学校を見て「なぜこれで崩れないのか」などど驚きの声を上げていた。
 また、同会や日本コンクリート工学会などの関連団体がコンクリート試験体を設置して行っている現地環境の曝露試験調査も視察し、同行した長崎大学の松田浩教授、佐々木謙二助教らが試験状況を説明した。
 今回調査したのは、一般観光客向けのルートではない立入禁止の区域。通常は視察目的でも立入が許されていないが、参加者全員が劣化・補修の専門家ということで特例で許可が下りた。長崎市としても今回の調査で得た意見を今後の整備事業に活用するという。
 調査終了後、徳納会長(福徳技研)は、「私は何度も来ているが、今後の補修を担う方々にぜひ見て欲しかった。この経験をそれぞれの業務や研究に役立ててもらえれば」とし、米倉会長(米倉社会インフラ技術研究所)は、「コンクリートはメンテナンスしていれば長持ちするが、逆に何十年も放置しているのは世界的にも珍しい。貴重な機会を作ってくれた関係者の皆様に感謝したい」と話していた。